【噂の新店】すし玲

人気の寿司店は高額か低額かの2極化していたところに、ドリンク込みで1万円台という新たなステージをブームにした店の一つ、「すし玲」が移転リニューアルオープン。若手アーティストの作品があちこちで使われるギャラリーのような空間で、おいしい+αな時間を過ごせます。

舞台は表参道から赤坂へ!

さまざまな感性が交錯する店内

ドリンク飲み放題付きのおまかせコースに税込みのオールインクルーシブスタイルで価格が1万円台、それが表参道の高級寿司店というから業界は騒然、あっという間に人気店となった「すし玲」が、より自由な空間造りを求めて赤坂へと移転しました。赤坂見附駅から徒歩3分ほどの場所にできた新しいビルという絶好のロケーションで、五感が刺激される唯一無二の食体験にテンションは上がりっぱなし!

オリジナルラベルの「龍力 ドラゴン黒」も!

飲み放題の日本酒は“寿司と文化を世界へ”という思いに共感した蔵元が“この店のために”と、希少な銘酒を提供しています。「龍力 ドラゴン黒 すし玲ラベル」を定番に、キリッと辛口で揃えた「酒匠 藤井耕太コース」と、うまみを重視した「MASU PROJECTコース」の2種類から選べ、その他にウイスキー、ワイン、テキーラなどが、ノンアル派にはティーコースが用意されています。

空間、料理を通じて作家の思いを伝えています

もう一つの楽しみは現代陶芸作家の器や酒器をはじめ、店の至る所にあるアートです。それらはすべてこの店のために作られた一点もの。同じように見えても少しずつ違っており、食材をのせる、酒を注ぐことで新たな芸術が生まれます。お気に入りのものが見つかればオーダー&購入ができるのもうれしい。

永井玲央也さん

板場を任されたのは寿司職人歴20年の永井玲央也さんです。日本料理と鰻の店の料理人だった父の背中を見て育った永井さんは高校3年生で「日本料理の料理人になる」と決めたそうです。1年間専門学校へ行き、銀座「鮨辰巳」に入店。16年勤めた後、「すし玲」の店主に就任しました。

目指すは「魚がおいしい!」と思える握り

一切れずつ状態を見て丁寧に切りつけます

供するのはつまみ6品、握り9〜10貫からなるおまかせコース(ドリンク、税・サービス料込み19,000円)です。「握りは江戸前の種が中心となるので、つまみで季節感を出しています」と永井さん。

「鰹のカルパッチョ仕立て」

こちらはつまみの一品。鰹には大根おろしに長葱と茗荷と紫蘇を混ぜた自家製ドレッシングがかかっています。口当たりはさっぱりしていますが、鰹のうまみをしっかりと感じます。

「稚鮎」

今まさに旬な「稚鮎」は塩を振ってふっくらと焼き上げています。添えてあるのは「ガリ酢(ガリを漬けた酢)」に漬けたミニトマト。甘酢のやわらかな酸味がたまらない!

長年の経験で作り上げた「白シャリ」

“魚がおいしいと言われる握り”を目指す永井さんは粒の大きい宮城産のササニシキをほんの少し硬めに炊き上げ、角の立たない白酢で仕上げた「白シャリ」を使います。ほんのりとした甘みがある白シャリは寿司種の色と味わいを引き立たせます。

「かます」

皮目にうまみのある「かます」は皮付きのまま酢締めに。炙りにすることが多い種ですが夏には酢締めがいい。魚がおいしいと思わせるには支えるシャリがおいしくなければ!と言わんばかりに、後味に米の粘りと甘みを残します。

「北海道では蛸と言えば真蛸ではなく水蛸なんです」

思わず「すごい!」と声に出てしまった立派な「水蛸」は北海道から。「雲丹や帆立、伊勢海老も食べる水蛸は、大きければ大きいほどおいしいと言われています」と永井さん。この足1本で1.5〜1.6kgあるそうです。

「水蛸」

その「水蛸」には飾り包丁を入れ、塩をほんの少し。酢橘を数滴落とし、皮を削りかけて仕上げます。身がぷっくりと盛りあがり、その弾力と歯応えに目を見張るほど。「今朝水揚げしたので弾力がすごいでしょう。明日は甘みが強くなりますよ」と永井さん。どちらも食べたい!

「おはぎ」

通称「おはぎ」と呼ばれるこちらは鮪の中落ちの中にキュウリの奈良漬けを忍ばせた一貫。鮪は言うまでもなく美味ですが白眉は海苔。パリッとして歯切れが良く、すぐに溶けて鮪と一体となって喉を通ります。トロトロした食感の中落ちにはこういう海苔でなければ!

「車海老」

永井さん推しの一貫は「車海老」。“海老、食べたな”と記憶に残るように握りたいと言うだけあって、一口では入らないほど大きくてピンと真っ直ぐな身は食べ応え十分!

寿司と文化を世界に広げていきたい!

書道家、万美氏によるロゴ

ここには琴線に触れる出会いがあります。絶妙な塩梅の酢使いで食材をおいしくする永井さんの料理に、“すし玲クリエーターチーム”である酒匠たちが、季節やトレンドを考慮しながらバッチリ合わせた酒、使用する器や盛り板、箸置き、折敷などはすべて若手作家の一点もの、数々のアートで彩られた空間、笑顔と良い距離感のサービス、1回転スタイルで時間を気にせずに心ゆくまで堪能でき、19,000円という驚きのプライス。レストランは総合芸術なのだと「すし玲」は教えてくれます。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
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文:高橋綾子 撮影:溝口智彦