〈New Open News〉
毎日、たくさんの新しいお店が登録されている「食べログ」。そんな「食べログ」のデータベースの中でも、オープン早々、高い評価の口コミがあったり、多くの「保存」をされたりしている『注目のお店』を食いしん坊ライターが紹介します。早くもお店に訪問した食べログレビュアーのコメントも掲載!
香下(東京・市ケ谷)

2025年3月末、市ケ谷駅から徒歩7分ほどの場所に四季折々の食材を活かした料理を提供する日本料理店「香下」がオープンしました。店主の香下 尭之氏は、神楽坂の名店「懐石 小室」で10年、「食べログ そば EAST 百名店」に選出され続けている「蕎麦懐石 無庵」で2年、その後再び「懐石 小室」で2年修業を積みました。修業に入る前より独立を志望していたため、良い物件に巡り合うことができ、今回の開業に至ったそうです。
新店舗があるのは、23区の中心で駅からも近いながら、喧騒から一歩離れた静かな場所。家賃やアクセスの良さといった現実的な条件に当てはまったのも理由の一つでしたが、香下氏にとってそれ以上に大きかったのが「縁」だったそう。師が独立する際に候補にしていた物件の一つであったこと、さらのそのまた師がこの界隈で店を構えていた時期があったこと、そんな重なりに導かれたのかもしれない、とのこと。

外観は骨董の蔵戸を基調とした重厚な引き戸が印象的。中が見えないぶん、通りを行く人々の好奇心を掻き立てます。まるで大人だけに許された密やかな遊び場のようです。
店内は日常の時間がほどけるような別世界。和の要素がありながらも、静かなバーのような落ち着いた照明に包まれた空間に客席は6席です。無駄を削ぎ落とした設えは、料理と向き合う時間を特別なものに変えてくれます。オープンキッチンからは職人の技を見ることができ、臨場感があります。


提供されるのは香下氏自ら厳選した旬の食材を使った「おまかせコース」16,500円。伝統的な技法で生み出す日本料理には、素材に寄り添うような火入れと、出汁の滋味深い味わいに、店主の研ぎ澄まされた感性がにじみます。コースは完全予約制で、18時半一斉スタート。「懐石 小室」仕込みのお造りやお椀の他、同店ならではのオリジナリティ溢れる料理を堪能できます。
料理に合わせたアルコールメニューは、国産の魅力が詰まった幅広いラインアップを用意。日本酒やワインといった醸造酒はもちろん、醸造酒より軽やかでいて、よりさりげなく料理に寄り添うという理由から、焼酎などの蒸留酒も取り揃えています。
日本の素晴らしい食材の魅力を再認識できる日本料理店「香下」。旬を肴に、じっくりとおいしい酒を味わう時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
食べログレビュアーのコメント

『香下さんは、「懐石 小室」で12年修行。業界一厳しいと言われ、卒業生は、ほとんどいない中、12年とは素晴らしい限り。立川にある「蕎麦懐石 無庵」では、設えの勉強に入ったとのこと。終始笑顔で、お話も楽しく、和やかな空気が流れます。2日に一度は、豊洲に行き、自ら魚を直に見て、状態を確認して買うとのこと。魚についても日々勉強しているようで、仕事の向き合いについても、真摯です。
オープンしてまだ、2か月。その間、師匠は2度来店し、その場でいろいろアドバイスをし、また、その後も電話があったとのこと。師の愛を感じます。そういう人がいることの幸せがかけがいもなく大事だと思いますが、大将もそれをよくわかっている様子。厳しい指導を全うした人にだけ与えられることだと思います。
それでは、コース 16500円の内容です。
1,先付
雲丹、シュガートマト、ヤングコーン、アスパラガス新生姜の甘酢ジュレで。新生姜が爽やかです。舞鶴の無施肥無農薬農家の野菜を使用。
2,お造り
・ソゲ ひらめの小さいもので、この時期が旬。小さいですが、身厚で、脂ものっています。初めていただきましたが、実は江戸時代の文献にも登場しているそう。
・イサキ 三重産。良質です。
・イサキの白子 なんと、爽やかな独特の香りがします。
3,お椀
オオヒメというヒメダイの仲間の白身魚。オカヒジキと花柚子を。品のあるお出汁です。
4,新蓮根の河豚の白子和え
茗荷と胡麻と
5,本蛤の潮煮
青のりのおろしと。とても身厚な本蛤で、三重産。「やっと、後ろから出してもらえるようになりました」と、大将。
6,ウメイロの焼き物
皮目が香ばしく、旨味のある身質。別皿に、カブカンラン(コールラビ)とらっきょうのすりおろし。好みで、魚につけるよう、工夫しています。
7,マトン
なんと、マトン登場。肉料理を出したい、と考えたが、牛肉ではない、と思い、これに至ったそう。新玉ねぎ、オクラ、黄韮としゃぶしゃぶで。お出汁には、マトンの骨を焼いたものを使用。コクのあるお出汁です。
8,新もずく、青柳の酢の物
9,炊き込みご飯
長崎のゴールドラッシュと桜海老蓋をあけると、立ち上る芳香。長崎のゴールドラッシュは、ブロッコリー農家さんのもので、氷詰めすることで、旨味、甘味を逃さない出荷のノウハウがあるそう。
赤出汁
香の物
10、水物
宮崎県産グレープフルーツ国産で3軒ほどしか作っていないそう。ものすごく水水しく、きちんと酸味と苦みが感じられます。山椒リキュールのジュレで。
お供は、湘南ゴールドサワー、お茶は、ほうじ茶、玄米茶、和紅茶が供されました。最後に、大将が、「私、お酒が大好きなので、オープン記念で、蒸留酒をなにかサービスします」とのこと。なんだか、このあたりから、大将が、バーテンダーに見えてきました。ご本人も機会があれば、バーで働きたかったそう。いただいたのは、
ポム ドゥ ノルマンディー
林檎ジュースにオードヴィーで作った
蒸留酒。
甘くて美味です。
なんだか、このまま、バータイムに突入したいくらい、楽しい時間でした』(ガレットブルトンヌさん)

『日本料理界の至宝「懐石小室」と蕎麦懐石の名店「無庵」で都合14年修行された後の独立だけあって、すべてが地に足の着いた美味しいお料理とお酒です。日本の風土や手仕事、生産者の方々を大切にされている気持ちも伝わり、お料理を頂きながら、思わず心が温かくなります。お店の構え、雰囲気もとても落ち着きがあります。シンプルだけど心にずっと残る、唯一無二の名店です』(0141-monさん)
※価格は税込、サービス料別。